ビットコインの価格発見機能がシカゴへと移りつつある状況が浮き彫りになっている。XBTOの最高商務責任者は、CMEグループがデリバティブ取引を24時間365日に拡大することで、機関投資家の主戦場が従来の暗号資産取引所からシフトする動きが加速し得るとの見解を示した。
反体制的資産でありながらウォール街とは対極とされてきたビットコイン(BTC)は、今や同じウォール街の取引フロアで研鑽された鋭敏なトレーダーたちの影響力を強く受ける存在になりつつある。
主要な暗号資産の取引は着実にCMEグループへと移行しており、同取引所が年内後半にデリバティブ取引を24時間365日対応にすることで、機関投資家の暗号資産リスクを担う支配的な取引所としての地位を確立する可能性がある。この変更は、暗号資産取引所が長らく保持していた数少ない優位性の一つである「常時アクセス」を剥奪することになる。
XBTOの最高商務責任者カール・ナイム氏はCoinDeskに対して、「より多くの伝統的なヘッジファンド運用者がこの資産クラスに参入するだろう。彼らは、慣れ親しんだインストゥルメントで取引でき、テクノロジーのアップグレードやシグナルの移行に煩わされる必要がないためだ」と述べた。さらに、「なぜ未知の相手方にカウンターパーティ・リスクを負わなければならないのか?」と指摘した。
CMEはすでに規制下のビットコイン先物市場で建玉(オープン・インタレスト)首位の地位にあり、米国の現物ETFに連動するヘッジ取引の多くを支えている。ただし、従来は週末に取引が停止することから「CMEギャップ」と呼ばれる空白が生じ、オフショア取引所が稼働し続ける週末期間中に機関投資家がポジション調整を行えなかった。
今回の24時間365日取引の実現により、この制約は解消される。これまでETFのみを活用していた機関投資家や週末のエクスポージャー回避を行っていた投資家も継続的にヘッジを行えるようになり、規制先物市場とオフショアのパーペチュアル(無期限)スワップ市場間の裁定機会は縮小していく。
CMEギャップの解消に伴い、暗号資産取引所において大規模なエクスポージャーを維持し続ける必要性は薄れていく。規制の明確化と確立された清算機関の存在を重視する機関投資家にとって、CMEは「代替の選択肢」ではなく「デフォルトの取引所」に近づいている。
暗号資産取引所側もこうした潮流を理解している。1月にはOKXのホン・ファン社長がCoinDeskに寄稿し、暗号資産デリバティブ取引が将来的に主要なグローバル取引所の現物出来高に匹敵、あるいはそれを上回る可能性を指摘。米国の規制下にあるボラティリティ市場がビットコインの世界的な価格発見において、より強固な基軸となるとの見解を示していた。
機関投資家が主導権を握る
ナイム氏は、この動きが資金流入の構造的変化を反映していると語る。かつては個人投資家がウォール街の代替としてビットコインを追いかける草の根的な動きだったが、現在ではその状況が逆転し、伝統的な機関投資家が主導権を握り始めている。
「現在、多くの政府系ファンド(ソブリン・ウェルス・ファンド)や機関と対話を重ねている。彼らは自分たちが理解し慣れたものを選択する」と同氏は述べ、まず現物ETFを通じてアクセスし、その後より複雑な戦略を模索する資金配分者の姿を描いた。
機関投資家のポジションの比重が高まるほど、ビットコインの短期的な価格動向は世界的なリスクセンチメントを反映しやすくなる。
ナイム氏は、「もし(トランプ氏がイランを攻撃すれば)、明らかにリスクオフの動きになる。金価格はすでに上昇を始めており、株価は下落し、ビットコインも下がるだろう」と述べ、米国がイランに対して体制転換を促す可能性を示唆した。
この枠組みの中で、ビットコインは独立した暗号資産トレードの対象というよりも、株式やコモディティと並列されるマクロ経済的なインストゥルメントとして価格付けされていく。
ナイム氏はその皮肉な一面についても認めている。
「ビットコインは分散化がすべてだった」と彼は述べた。
しかしながら、機関投資家マネーの拡大とともに流動性が規制下の清算機関に集約されることで、この資産を支えるインフラはより中央集権的な様相を帯びていく。なぜなら、機関投資家は“リスク資産”を追い求めているのであり、“リスクのあるプラットフォーム”を選好しているわけではないからだ。